結論から言うと、現状ではBluetooth 4から5にしても音質は全く「良くなりません」です。はい。
筆者もなんとなくバージョンアップすると性能が良くなるのだろうなとモワ〜と思い込んでいましたが、調べてみるとまったくそんなことはありませんでした。(・・・通信性能は多少改善します)
ただ最新のBluetooth 5.2で新しい方向が示されたので、今後は良くなる可能性はあります。
音質に限って言うと、仕様はまったく変わっていない
Bluetoothにおけるオーディオデータをストリーミング配信するためのプロファイルが「A2DP(Advanced Audio Distribution Profile)」であることはご存知の方もおられるかもしれません。
そしてA2DPで接続する際の標準コーデック(圧縮プログラム)が「SBC (Sub Band CODEC)」です。現在、発売されているBluetooth接続の音響機器は必ずこのSBCに対応しています。
しかしSBCは伝送環境の悪化に強く変換時の負荷も少ないというメリットがある一方で、反対に音質の劣化や再生時の遅延が起きやすいという性質があります。
そのため、ハイレゾ級のデータを転送するには不向きであることから、Qualcomm社のapt XやSonyのLDACなどのコーデックが開発され、実際に製品に使用されています。
コーデックにはSBCの他に懐かしいMP3やアップル製品で良く使われるAACもあります。
ここで注意したいのは、これらはいずれもコーデック(圧縮プログラム)の違いで、プロファイルの違いではないということです。
プロファイルはずっとA2DPであり、Bluetooth2.1に最大3Mbpsの拡張通信規格「EDR(Enhanced Data Rate)」を追加した「Bluetooth 2.1+EDR」の環境から、ずっと変わっていません。
コーデックの違いによってより多くのデータが伝送可能になり、音質が改善することはあっても、それはコーデックの違いでBluetoothのバージョンの違いでは無いということです。
つまりBluetooth 4でも5でも現状では、クラシックと呼ばれる「Bluetooth 2.1+EDR」の環境で通信を行っています。
Bluetooth 4や5では低電力化や通信性能が改善されてきた
ではBluetooth 4や5では何が改善されたのでしょうか?
ひとつはBluetooth 4.0で低電力化の方針が示されました。Low Energyから「LE」と呼ばれています。従来よりも半分近く消費電力を抑えられ、ボタン電池1個で長期間動作が可能になりました(TILEなどスマートトラッカーがその代表例)。
※Bluetooth LE→Bluetooth 4.0 BLEと表示されることがあります。
ただLEは既存の通信規格と互換性が無く、オーディオに対応していないので、音質にはほとんど影響がありませんでした。
ただスマホでイヤホンなどの電池残量が確認できるのは新しく追加された「Battery Service Profile」というプロファイルによるものですので、まったく恩恵がないわけではありません。
Bluetooth 5.0ではデータ補正の技術が進歩して、通信速度が2倍、通信距離が4倍、通信容量は8倍になりました。これによりBluetooth通信の安定性についてはオーディオに限らず改善されたと言えます。
Bluetooth 5.1では方向探知機能が追加されましたが、オーディオ関係について進化はありませんでした。
Bluetooth 5.2で激変するのか?
このような状況だったのですが、2020年1月、ついに業界団体Bluetooth SIGは5.2にて、LEに対応した新音声規格「LE Audio」と、高品質・低電力が特徴の新しい音声コーデック「LC3」(Low Complexity Communication Codec)を公表しました。
これにより従来の「Bluetooth 2.1+EDR」環境は「Classic Audio」と呼ばれることになりましたが、別にLE Audioと互換性があるわけではなく、「LE Audio」はまったく新しいプロファイルということになります。
一番のポイントは低電力対応で、これからバッテリー持ちが良くなる機種が次々と登場することになりそうです。ただ音質に関わるコーデックについては未知の部分が多く、現在のように新コーデックが乱立する可能性のないわけではありません。
さらに「LE Audio」では、ブロードキャスト機能が強化され、台数制限無しに、コンテンツ放送を実現可能になります。
例えば、自身のスマートフォンにある音楽コンテンツを、周囲の複数の人々に送信したり、空港や映画館、会議場などの施設での放送にも利用できるようです。これまでにない新たな使い方やアプリが生まれそうですね。
このように良い面ばかりが誇張されていますが、「オーディオコーデックの処理は重いため、現状のBluetooth Low Energyのプロセッサでは処理できないので、外付けのCODEC ICが必要になる(出典)」とも言われています。導入にはやや敷居が高そうですので、高級機種やDAPなどから採用が始まりそうです。
まとめ:今後に期待
つまり、現状(2021年9月)ではLE AudioならびにLC3対応製品は発売されておらず、Bluetooth 5.2の真の恩恵を受けることはできないという状況なのです。2021年の後半には登場するのではと噂されていますが、どうなのでしょうか??
・・・Bluetooth 5.2対応をうたっているオーディオプレーヤーがある?。ですよね。筆者には良くわかりませんが、ある種の送信の規格を満たしているのかもしれません。ただ「LE Audio」には対応していないでしょう。
(補記)Bluetooth 5.3が発表されました。LE Audio時の低電力化と高速化についてさらなる進展があるようです。
以上、Bluetoothとオーディオ音質についてまとめてみました。ご参考いただければウレシイです。